——はじめての「お友達」
「レティアが、お友達を連れてくるのは初めてじゃないのかい?」
じぃーじが、優しい笑顔を浮かべながら問いかけた。その言葉にレティアは、満面の笑みで答える。 「うん。はじめてだねぇー♪ だって、みんな怖がっちゃってるんだもーんっ。」レティアはかつての友達とのことを思い返していた。遊びはするけれど、感情を感じ取る力のせいで、相手の怖がる心が伝わってきてしまう。その結果、レティア自身も壁を作り、心の距離が縮まらなかったのだ。
でも、ルーシーは違った。表情はムスッとしていて口調が強くても、彼女から伝わってくる感情は恐れではなく、レティアへの好意だった。そのため、レティアも安心して甘えたり頼ったりすることができた。
「そうよね……レティーは、ハチャメチャ過ぎるものね……驚かされてばかりだったわね。あはは……。」
ルーシーは少し照れながら笑い、これまでの出来事を思い返して苦笑いを浮かべる。 ——ルーシーからの手土産とばぁーばの気遣いその時、何かを思い出したようにルーシーは顔を上げ、持っていた獲物をじぃーじとばぁーばに差し出した。
「あ、あのぅ……これ、お土産です……良かったら食べてください。」 緊張した表情でしどろもどろに話す彼女に、レティアはすかさず声を添えた。 「あ、それねー。ルーシーが頑張って獲ってくれたんだよぅ♪」「……レティー、うるさいわよっ。」
ルーシーは慌ててレティアを見つめ、恥ずかしそうに言う。「だーって、ホントじゃーん♪」
レティアがからかうように返すと、ルーシーは顔を赤くしながらそっぽを向いた。 「恥ずかしいじゃないのっ。ううぅぅ……。」その様子を微笑ましく見守っていたばぁーばが、柔らかな声で言った。
「さっそく調理をして、夕食に食べるかねぇ。じいさんも手伝っておくれ。ルシアスちゃんは好きな部屋を使っておくれ。」そう言うと、ばぁーばはじぃーじを連れて調理の準備のために外へ向かっていった。ルーシーの表情には、少しホッとしたような安堵と、どこか温かな気持ちが滲んでいるようだった。
——深まる友情♢初めての同室と野営の約束「わたし、あんたと同じ部屋でいいわよ。」
ルーシーは恥ずかしそうに顔を逸らしながら呟いた。その声には照れ隠しの強さが混じっていたが、どこか嬉しさと優しさも感じられる。 「レティーは寂しがりやっぽいし……一緒にいてあげてもいいわよっ。」「うん。一緒に寝よー♪ わたしのお部屋、こっちー。」
レティアは嬉しそうにルーシーの手を引っ張りながら部屋へ案内した。その無邪気な笑顔に、ルーシーは少し戸惑いながらもついていく。「……わ、わたしも……人の家に誘われたの……初めてよ。誘ったこともないけどね……。」
手を引かれながら、ルーシーは小さな声で呟いた。その言葉に、レティアは目を輝かせて答える。 「そーなんだぁ……いっしょだね! お互い初めてのお友達だったんだね♪」「そういう事になるわね……。」
ルーシーはレティアの顔をちらちらと見ながら、顔を赤く染めていた。レティアの部屋は、女の子らしい可愛らしい空間だった。壁には動物の絵が貼られ、手掘りの動物の置物が並んでいる。その温かみのある雰囲気に、ルーシーは少し安心した様子を見せた。
二人はベッドに並んで座り、話を始める。
「あとで、野営の話してもいーい? きょかを取れば良いんでしょー?」 レティアが楽しそうに尋ねると、ルーシーは面倒そうに答えた。 「まだ覚えていたの?」 その言葉とは裏腹に、彼女の心にはワクワクした感情が伝わってきて、レティアはつい寄りかかってしまう。「たのしみだねぇ〜♪」
レティアは嬉しそうに声を弾ませた。「ま、まあ……そうね。許可を取れるかしらね……? 女の子が二人だけの野営だし……普通は許可してくれないと思うけれど、まあ……レティーだし。」
ルーシーは先ほどの出来事を思い出し、苦笑いを浮かべながら言った。「むぅ。わたしだからって……なによぅ……。」
レティアは頬をぷくーっと膨らませ、不満そうに言った。「あんたねぇ……狼のこととか、魔法のこと忘れたのかしら? あれ、普通じゃないからっ。」
ルーシーは改めて指摘すると、レティアは少し俯きながら暗い顔で答えた。 「だってぇ……できちゃうんだから、仕方ないじゃーん。便利だしぃ……。」その様子に、ルーシーは慌てたように声をかけた。
「あ、えっと……その……責めてるわけじゃないし、便利なら良いんじゃないの。わたしも……助かるわけだし。」その言葉に、レティアは少し顔を上げ、安心したような表情を浮かべた。二人の間には、少しずつ信頼と友情が深まっていく温かい空気が流れていた。
——温かい食卓の準備ばぁーばとじぃーじが手際よく調理した鳥料理は、食卓に並べられた瞬間、全員の視線を集めた。焼き上がった鳥肉は、外はカリッと香ばしく、中はジューシーに仕上がっており、湯気と共に食欲をそそる芳醇な香りが漂っていた。表面にはじぃーじ特製のハーブミックスがまぶされており、一口ごとに程よい塩味とハーブの香りが広がる。彩りとして添えられたばぁーば自慢の野菜も、丁寧に焼き目がつけられ、自然の甘みが引き立つよう工夫されている。
彼は慎重にレティアの反応を見ながら言葉を選び、丁寧に提案を述べた。「レティア様の負担にならなければ……数頭を残していただいて……収納していただきギルドで食材として買い取りをいたしますけれど……どうでしょうか?」 その言葉には、ジェレミーの優しさと気遣いが込められていた。レティアの機嫌を損なわないよう、彼の言葉はあくまで控えめで慎重だった。 レティアはジェレミーの提案に耳を傾けながら、再び自分が狩った獲物の山を眺めた。そして少しだけ困ったような表情を見せつつ、可愛らしく笑って誤魔化すように答えた。「うん。ちょっと……獲りすぎちゃったねぇ。えへっ♡」 その反応にジェレミーは少し安心したようで、肩の力を抜きながらうっすらと微笑みを浮かべた。一方で、フィオとルーシーもこの光景に少し呆れたように見つめていたが、レティアの無邪気な笑顔に免じて何も言わず静かに見守っていた。♢大量の獲物とギルドの騒ぎ 翌日、レティアは大量の獲物をバッグに詰めてギルドに向かった。ギルドの扉をくぐると、その異様な重さに周りの冒険者たちが好奇の目を向ける。そして、そのバッグからシカ、ウサギ、さらには森でしか見られない珍しい獲物までが次々と引き出される光景に、ギルド職員や冒険者たちがざわつき始める。彼らの間には、驚きの声が響き渡る。「……あの、これは全部一人で仕留めたんですか?」 ギルド職員の一人が目を見開きながらレティアに尋ねた。彼の声は、驚きでわずかに上ずっていた。 レティアはニコニコ笑顔で答える。その笑顔は、何の悪気も感じさせない。「うん♪ みんなでお昼に食べようと思ってたんだけど、さすがに多すぎちゃったから持ってきたの! ギルドで使ってねぇ♡」 その無邪気な声にギルド職員はさらに困惑しながらも感心していた。周囲の冒険者たちはその規格外の活躍に驚きながらも、彼女の能力を改めて認めざるを得ない状況だった。♢料理コンテストの開催
ジェレミーは驚きと感心が入り混じった声を漏らした。彼の表情には、畏敬の念が浮かんでいる。「これほどの魔物を……まるで子犬を追い払うように討伐するとは……。」 フィオも目を見開きながら笑みを浮かべ、少し皮肉を込めて言った。彼女の声には、諦めにも似た感情がにじんでいる。「やっぱり……わたしたちが駆けつけても、わたしたちが邪魔になっちゃいますねー。」 ルーシーは剣を収めながら一息つき、ホッとした顔で呟いた。彼女の肩の力が抜け、安堵の息を漏らす。「ちょっと、あんたねぇ……わたし達の獲物を横取りしないでよね!」 その言葉には若干の不満を含みつつも、心のどこかで助かった安堵感が滲み出ていた。 一方、フィオはルーシーの言葉に対して優しい笑みを浮かべ、そっとレティアの耳元で囁いた。彼女の指先が、レティアの髪を優しくなでる。「そんなに、機嫌を悪くしないで……レティーちゃん。ほんとはね……すごく助かったんだよ。ルーシーの顔を見ればわかるでしょ。ウフフ♪ ありがとね。」 その言葉に、レティアは少し顔を上げたものの、どこかしょんぼりした様子を見せていた。彼女の瞳は、まだ潤んでいるように見える。♢「じゃま!」の一言とレティアの拗ね レティアは影から現れる際に、ルーシーが安堵している様子を感じ取っていた。しかし、戦闘中に放たれた「じゃま!」という言葉にショックを受けていたのだ。その言葉が、彼女の心に深く刺さった。 彼女は座り込み、わざと俯きながら大きな瞳を潤ませてルーシーを見上げる。その瞳には、今にもこぼれ落ちそうな涙が浮かんでいた。「ルーシーに『じゃま!』って言われたぁ……。」 その姿はまるで小さな子どもが拗ねているかのようで、愛らしさが漂っていた。 そんなレティアに可愛らしく訴えられたルーシーは、思わずモジモジしながら目をそらし、恥ずかしそう
♢ルーシー、ジェレミー、フィオの連携討伐 森の奥深く、ルーシー、ジェレミー、そしてフィオの3人は順調に討伐を進めていた。魔物の群れが周囲に潜む中、剣士二人が前線で連携を取り合い、後方のフィオが魔術で支援をすることで見事なチームプレイを展開している。初めての連携にもかかわらず、その動きは手慣れているようで、見ている者には何度も共に戦ってきた仲間のように映った。 ルーシーは素早い身のこなしで魔物の攻撃をかわし、隙を見つけて剣を振り抜く。その剣は一閃で魔物の弱点を捉え、鮮やかに斬り裂いた。彼女はその動きの間もジェレミーの動きを観察し、互いにカバーし合う形で攻撃の隙を補っていた。 ジェレミーはしっかりと剣を構え、魔物の攻撃を受け止めるたびに力強く押し返す。その一撃一撃は訓練を重ねた結果であり、剣の軌跡は鮮やかで正確だ。魔物に囲まれた場面でも冷静に足場を確保し、ルーシーが動けるスペースを作り出していた。 後方のフィオは、魔物の動きを見極めながら身体強化の魔法を唱える。ルーシーとジェレミーの剣が力強く鋭さを増すのは彼女の支援があってこそだった。さらに、彼女は魔物の足元に氷の魔法を放ち、足止めをすることで剣士たちが安全に攻撃を仕掛けられる状況を作り出していた。「ジェレミー! 次、右側の魔物を頼むわ!」 ルーシーが剣を振り抜きながら声を掛ける。「了解です。私が押さえますので、その間に仕留めてください!」 ジェレミーはすぐに魔物の前に立ちはだかり、剣を構えた。 フィオはその様子を見ながら笑顔で声を掛ける。「ふたりとも、強化魔法をかけるよ! これで攻撃がもっと効くはず!」 ルーシーが笑いながら応じた。「頼りにしてるわよ、フィオ!」 ジェレミーも魔物を押さえ込みながら笑顔を浮かべて応じる。「感謝します、フィオさん。これで勝てますね!」♢遠吠えとレティアへの信頼 森の空気が静けさを取り戻し始めたその矢先、遠くの方から響き渡る魔物の雄叫びが聞こえた。それはまるで戦いが始まる合図のようであり、一行の注意を引き付けた。その音を
フィオもその言葉に続けて、レティアの提案に乗るように明るく答えた。「うん。それでいいよ。久しぶりの魔法を頑張っちゃおーっと! フルーツタルトのためね♪」 その無邪気な言葉に、フィオがだんだんとレティアに似てきている様子が伺えた。 ジェレミーは控えめに言葉を紡ぎながらも、目にはすでにやる気が燃え上がっているのが見えた。「それは助かりますね。復帰後の第一戦目ですし……ご迷惑をお掛けするかもしれませんが、よろしくお願いします。」♢討伐開始とルーシー、フィオの目標「さっ。始めるよぅ〜♪」 その声と同時にレティアの姿がスッと消えたかと思うと、『ドサッ!……ドサッ!』という重量のあるものが地面に倒れる音が森全体に響き渡る。音の正体は討伐された魔物だった。 一方、その勢いに触発されたルーシーも剣を構えながら、二人に声をかけた。「……れ、レティーに負けてられないわね。行くわよ!」 彼女の顔には闘志が宿り、その言葉には仲間たちを奮い立たせようとする力が感じられた。 そんなルーシーの姿を見て、フィオは少し微笑みながら問いかけた。「ルーシーは、何か食べたいものあるの?」 ルーシーはふと考え込み、少し照れたような笑顔を浮かべて答えた。「ぱ、パフェとか食べてみたいかなぁ……ケーキも食べてみたいし……まっ、無理しない程度に頑張ろ。」 彼女もまた、完全にレティアのペースに乗せられている様子だった。♢レティアの進化する討伐スタイル その頃、レティアは体を動かすために虹色の能力でラクに魔物を倒すのではなく、自分で虹色の能力を活かして剣を作り出して戦いに挑んでいた。「るんっ♪ るーんっ♪ みーつけたぁ♪ えいっ♪ とぉーうっ!」 彼女の軽快な声が響く中、手元に輝く虹色の剣が魔物を次々と切り裂いていく。剣が振られるたびに空中に鮮やかな光
フィオが恐る恐る呟く。その視線はノクスの銀色に輝く瞳と鋭利な牙に向けられていた。彼女の背筋には冷たい汗が流れている。 一方のジェレミーも微笑みを浮かべる余裕などなく、強張った表情で呟いた。彼の声は震え、その驚きを隠しきれない。「信じられません……このような存在が懐いているとは……。」 ルーシーは怯えるフィオとジェレミーに目をやり、軽く肩をすくめながら苦笑いを浮かべた。「慣れればかわいいと思えるかもよ。ほら、レティーはあんなに余裕で接してるでしょ? まあ……わたしにはムリだけどね。あはは……。」 その軽妙な言葉が少し場の空気を和らげるように響いたが、ノクスとシャドウパピーズの圧倒的な存在感は、まだフィオとジェレミーの背筋を硬直させたままだった。だが、その緊張の中でもレティアは天真爛漫な笑顔を浮かべ、ノクスの巨大な頭を何のためらいもなく撫でていた。 怯えるフィオとジェレミーを横目に、ルーシーは再び苦笑いしながら呟いた。「ほんと、レティーって……すごい子よね。」♢受け入れの兆しと獲物への不満 こうして少しずつ場が落ち着き始める中、レティアの柔らかい態度が仲間たちの緊張を解きほぐしていくように見えた。森の木々の間を吹き抜ける風が、彼らの頬を優しく撫でる。 ジェレミーはノクスとシャドウパピーズの圧倒的な威圧感に圧倒されながらも、なんとか気持ちを奮い立たせるように自分自身に言い聞かせるような声で呟いた。彼の声はまだかすかに震えているが、その中には前向きな姿勢が感じられる。「ま、まあ……仲間ということであれば……心強いですかね。」 その言葉には怯えが滲んでいたものの、彼自身の中で必死にポジティブな面を探そうとしている様子が感じられる。彼の表情には、葛藤と、そしてわずかな希望が浮かんでいた。 続けて、フィオもジェレミーの言葉に共感するかのように頷きながら震える声で答
その間もレティアはニコニコと笑顔を浮かべ、まるで自分の力をひけらかすこともなく当たり前のように話していた。だが、その使役獣たちがすでに討伐を進めているという状況に、フィオは少し唖然とした様子でため息を漏らした。「もう……ほんとレティーちゃんって……いろんな意味で手に負えないわね♪」「さすが、全職業の適性をもっているレティア様らしいですね。」 嬉しそうに呟くジェレミー。彼の声には、レティアへの尊敬がにじみ出ていた。♢ノクスとシャドウパピーズ、影からの出現「そっかぁ。ジェレミーに紹介してないよね。ノクス、シャドウパピーズきてー。」 レティアが親しげな声で語りかけたその瞬間、彼女の影が揺れ動き始めた。影が膨らみ、そこから次々と飛び出してくる巨大な狼型の魔物と狼の最強種の群れ。その異様な光景に周囲の空気が一変した。森の鳥たちのさえずりが止み、静寂が訪れる。 最初に姿を現したのは、漆黒の毛並みに紫の模様を纏ったノクス。その巨大な体は地面に影を落とし、一帯に圧倒的な威圧感をもたらした。その毛並みは夜闇に溶け込むかのように深く、紫の模様が妖しく輝いている。銀色に輝く瞳が一行を鋭く射抜き、どんな隠れた敵も見逃さないという冷酷な輝きを宿していた。 剣のように鋭い牙が、わずかに覗き、その口元から漏れる低い唸り声は森全体に響き渡る。足元からは瘴気が揺らめきながら漂い、その触れた枝葉は瞬く間に枯れ果て、まるで生命そのものを奪われたかのようだった。枯れた葉が、カサカサと音を立てて地面に落ちる。 続いて現れたのは――ノクスが従えるシャドウパピーズの群れ。狼種の中でも最強とされるその存在は、ただ佇むだけで周囲に圧倒的な恐怖を植え付ける。彼らの存在が、森の空気を重くする。 金色の瞳が暗闇の中で鋭い光を放ち、獲物を捉える目つきには、容赦なき狩人の執念が宿る。漆黒の毛並みに包まれたその巨大な体は、大型犬すらはるかに凌駕し、一群となって動くたびに周囲の空気を震わせた。地面が、彼らの足音で微かに揺れる。 牙と爪の鋭さは、見る者に本能的な恐怖を刻み込む。唸り声